夜 間 飛 行 惑 星

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□ モノカキ35 □

合 図

 その光に先に気が付いたのは紀宏(のりひろ)だった。
「なあ…アルデバランの近くにあんな星、あったっけ」
「んあ?つーかそもそもアルデバランってどれよ」
 紀宏が指さす先に目を向けながら、縹(はなだ)が笑う。
「おまえ、そんなでよく高校受かったなあ」
「うるせー。面接の点がよかったんだよ。で、どれ」
しみじみ呆れて見せる紀宏を肘で小突いて促してくる。
「あれ…あの、赤っぽい星」
 街灯の明かりが邪魔にならない場所に立ち止まって、二人して空を見上げる。
「ああ…アルデバランは分かった。で、おまえが言ってんのはどの星?」
「右下の、アルデバランよりちょっと暗い星」
「ふうん…」
「あの場所に、あんな明るい星ってなかった気がするんだけど…」
 紀宏の言葉に、理科の教科書か星座盤があったらなあ、と縹がぼやく。
「家に帰ったら確かめてみるよ」
 望遠鏡もあるし、と言った紀宏にうなずいて歩き出した縹が、ふと思いついたように手を叩く。
「もしかして、あれかもよ。超新星とかいうヤツ」
「まさか」
 中学生ごときに見つけられるものなら天文学者は苦労しないよ、と紀宏が答えると、じゃあUFOだ、と笑う。
「故郷の星から俺を迎えに来る途中なんだ」
「どこ、故郷の星って」
「アルデバラン」
 縹は、さっきまで名前も知らなかったはずの星を自慢げに指さした。
「迎えが来たら、行くの?」
 紀宏が笑いを噛み殺しながら尋ねると、おう、と答えて胸を張る。それから、紀宏を振り返ってにやりとして見せる。
「一緒に連れてってやろうか?」
 自信ありげなその顔に、堪らなくなって紀宏は笑い出す。
「いいよ、遠慮しとく」
「ええ?なんでよ?俺がいなくなったらさみしいだろ?」
「だって、俺の故郷、地球だし。アルデバラン、言葉通じないし。それ以前に、さみしくないし」
「ちぇー」
 縹が大げさに肩を落とす。その背中を、ばんばん叩いて紀宏は言ってやる。
「向こうからさあ、たまに信号送ってよ。アンテナ立ててチェックするから」
「……やっぱさみしいんだな」
「ちがうって」
 笑い合い、肩を叩き合って別れた。いつもの曲がり道で。
「じゃあな」
「おう、また」


 春からは、別々の道を往く。


 その光がほんとうに超新星だったと知って二人が悔しがるのは、数日後のことである。



タイトル提供:「恋かもしれない35題」
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