夜 間 飛 行 惑 星

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□ モノカキ35 □

未 来

 どんな未来が待っているかをあらかじめ知っていたとしても、あのときの僕に他の道を選ぶことなどできはしなかった。

 君の冷たい頬に触れても、遠ざかってしまった現実感は戻ってはこないのだった。
 最後に何か言うべきことがあったような気がするけれど、それすら、僕の思い上がりかもしれない。
 もっと君に、言ってやれることがあったんじゃないか、してやれることがあったんじゃないか、心はそんなふうに足掻くけれど、君はもう、遠い場所にいて。

 そこに、風は吹いているかい?花は咲くかい?

 君が何か言いたそうにしているのに、気付いていないわけじゃなかった。
 促すのはたやすいことだった。それをしなかったのは、二人の間に変化を願ったからなのかもしれない。
 わざと冷たい言葉を投げた僕に、戸惑ったような顔を見せて君は、それでもうなずいた。そのことに対する苛立ちもあったかもしれない。
 僕は、変えてゆきたいと思っていた。
 僕らの間にいつからかわだかまる暗い藪を払って、この重くまとわりつく気配を拭い去ってしまいたかった。
 ここから、何かを、新しく始めたいと願っていた。
 だが、君にそのことを正しいやり方で伝えられなかったのは、やはり僕の落ち度だったのだろう。

 また会えるって、信じていたのに。
 君は確かに、手を振っていたのに。

 こんな結末は、思ってもみなかった。これが映画なら、チケット代を払い戻せと喚きたてたいくらいだ。
 けれど。それでも。
 どんな未来が待っているかをあらかじめ知らされていたとしても、僕らはあのとき、他の道を選ぶことに心動かされたりなどしなかった。

 ―― そうだろう、君?



タイトル提供:「恋かもしれない35題」
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