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「――とうとう、正真正銘二人きりになっちゃったね」
朝靄の中、まだ弱い光を背にして立ち尽くす彼に、肩を抱くようにして寄り添いながら囁く。
あぁ、と肯定の返事とも溜息ともつかない曖昧な返事。表情はややうつむきがちの頬を覆う髪のせいで読めない。
「寂しい?」
僕の問いに彼は、ゆっくりと首をかしげるみたいに顔を起こした。潤んだ瞳が僕を見つめ、スローモーションのように二三度瞬く。
「……いや」
さみしくはないよ、と小さく笑う。
「おまえ、いるじゃん」
僕が衝動的に伸ばした手を、彼はよけなかった。しがみつくみたいにして肩に顔を埋めた僕の背中を、やわらかく抱きしめ返してくる。
「あなたがいてくれて、よかった……」
「俺も、おまえがいて、うれしい」
行こうか、と彼が僕を促す。
靄も晴れ、すっかり明るくなった。地平線まで続く廃墟と化した街、二人の足音以外には音もない世界。
ぽつりぽつりと瓦礫に光る朝露は、ダイヤモンドのように煌めいている。
09/17/ (月) 00:00|
箱庭(小説)
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